うちの母親の話。
ある夏の日、僕は居間でくつろいでいた。
夕方になって母が帰宅し、僕に言った。
「あら、帰ってたの。アイス買ったけど、一本しかないわ」
無いと言われると欲しくなってしまう。
「じゃあ、半分ちょうだい」
そのアイスはジャイアントカプリコというやつで、
三角のコーンの中にアイスが詰まっているやつだった。
「わかった」
そう言って母は台所に消えた。
しばらくして母が何故か一枚の皿を持ってきた。
「はい」
その皿の上にはジャイアントカプリコが乗っていた。
わざわざお皿に?
なんて丁寧な。
「はい、半分」
僕は先に食べていいということかと思い、
勢い勇んでアイスを手に取ると、
そのアイスは・・・・・
ええ。まったくもう、中心からパカリと縦に、きれいに半分だったのです。
「ね。半分でしょ」
母は、はにかんでそう言いました。
そんな母は僕が赤ん坊のころに、
世をはかなんで、
団地の部屋の窓から飛び降りて心中しようとしたことがあるらしいです。
しかし、当時住んでいた部屋は地上一階だったため、
飛び降りれず、心中を断念したそうです。
何言ってんだ、てめえ。